
「部屋のリフォームには100万円かけた。家賃も相場通り。ネットの閲覧数も悪くない」 それなのに、なぜか内見後の申し込みが入らない……。
もしあなたが今、このような状況に陥っているなら、その原因は「室内」ではなく、入居者が最初に足を踏み入れる「エントランス(共用部)」にあるかもしれません。
不動産賃貸において、内見時の第一印象は「最初の15秒」で決まると言われています。つまり、玄関のドアを開ける前、エントランスや廊下の雰囲気を見た瞬間に、入居者の心の中ではすでに「アリ」か「ナシ」かの判定が下されているのです。
今回は、大規模な外壁塗装や高額な設備投資を行わずに、わずか数千円〜数万円の「微細なコスト」で物件の印象を劇的に変える、資産管理(AM)視点の空室対策をご紹介します。

多くのオーナー様は、退去が出るたびにクロスの張り替えや床の修繕など、「専有部分(室内)」のリフォームには力を入れます。しかし、エントランスや廊下といった「共用部分」については、「清掃さえしておけば良い」と考え、建築当時のまま放置されているケースが少なくありません。
ここに、大きな機会損失が潜んでいます。
入居希望者が内見に来るのは、土日の昼間だけとは限りません。仕事帰りの夕方に来ることもあれば、昼間に内見した場合でも、「実際にここに住んで、毎日仕事から帰ってきた時」のシチュエーションを無意識に想像しています。
特に、セキュリティを重視する女性や、帰宅が遅いビジネスパーソンにとって、「夜のエントランスの雰囲気」は、家賃や間取り以上に重要な決定打(または断る理由)になり得ます。

私たちフィナンシアジャパンがメインで活動する札幌エリアでは、この「夜の印象」が特に重要です。 ご存知の通り、北海道の冬は日没が早く、16時過ぎにはもう外は真っ暗になります。1年の約半分は、入居者は「夜の顔」の物件に帰宅することになるのです。
薄暗いエントランス、チカチカと点滅する蛍光灯、奥が見通せない廊下……。 オーナー様にとっては「いつもの風景」でも、初めて訪れる入居希望者、特に女性にとっては「恐怖」以外の何物でもありません。
どれだけ室内がお洒落なリノベーション済み物件でも、共用部で「怖い・不用心」と感じさせてしまえば、その時点で検討リストから除外されてしまいます。 逆に言えば、エントランスの演出さえ成功すれば、競合物件に大きな差をつけることができるのです。

では、具体的にどうすれば良いのでしょうか? 最も効果的かつ、今日からすぐに実践できるのが「照明の変更」です。照明器具そのものを交換する必要はありません。電球(管)を変えるだけです。
築15年以上の物件でよく見かけるのが、青白い光の「昼白色(ちゅうはくしょく)」の蛍光灯がそのまま使われているケースです。 昼白色は、オフィスや学校のように「作業をする場所」には適していますが、住まいにおいては「古さ」「寒々しさ」「安っぽさ」を強調してしまいます。さらに、汚れや塗装の剥がれを目立たせる効果もあります。
これを、温かみのあるオレンジ色の「電球色(でんきゅうしょく)」に変えてみてください。
電球の色温度(ケルビン)を変えるだけで、同じ建物でも「古いアパート」から「ヴィンテージマンション」へと印象がガラリと変わります。LED電球なら1個数百円〜1,000円程度。エントランス全体でも3,000円〜5,000円程度の投資で済みます。
防犯のために「とにかく明るくしよう」として、投光器のような強力なライトをつけるのは逆効果です。眩しすぎると落ち着きがなく、かえって安っぽく見えてしまいます。
高級ホテルのエントランスを思い出してください。必ず「影(陰影)」があります。 既存の照明器具の位置を変えるのは大変ですが、例えば「観葉植物の下からスポットライトを当てる(アッパーライト)」、「足元灯(フットライト)を置く」といった工夫で、立体的な空間を演出できます。
また、人感センサー付きのライトを活用し、「人が通った時だけパッと明るくなる」演出を加えることで、入居者に「この物件は私を迎えてくれている(管理されている)」という安心感を与えることができます。

照明以外にも、数千円〜数万円のコストで「管理の質」を高め、成約率を上げるテクニックがあります。ポイントは「生活感(ノイズ)」を消すことです。
集合ポストは、物件の管理状態を映す鏡です。
これらは全て「管理不全=スラム化」のサインと受け取られます。 ガムテープ跡をシール剥がしで綺麗にする、投函口を塞ぐための専用プレート(数百円)を使う、不要なチラシ用のゴミ箱を設置する(そして定期的に回収する)。これらは材料費よりも「手間」の問題ですが、その手間を惜しまないことが満室への近道です。
また、古い南京錠を使っている場合は、「ダイヤル錠」への交換(1個3,000円程度)をお勧めします。見た目がスマートになるだけでなく、入居時の鍵渡しの手間も省けます。
エントランスの掲示板に、錆びた画鋲でゴミ出しカレンダーや注意書きが貼られていませんか? 紙が湿気で波打っていたり、日焼けして黄ばんでいたりすると、非常に見栄えが悪くなります。
これも、100円ショップやホームセンターで売っている「アクリルフレーム」や「マグネットケース」に入れるだけで、一気に「ちゃんとしたマンション」に見えます。 掲示物のフォントやデザインを統一するのも効果的です。
札幌の冬は、雪や泥で靴が汚れます。エントランスのマットが汚れていたり、めくれ上がっていたりすると、第一印象は最悪です。
レンタルマットを利用するのも手ですが、コストを抑えるなら、ホームセンターや業務用通販で「デザイン性の高い吸水マット」を購入し、シーズンごとに買い替えるのも一つのAM戦略です。 赤や緑などの原色ではなく、建物の雰囲気に合わせたダークグレーやブラウンなどの落ち着いた色を選ぶのがポイントです。

「共用部にお金をかける余裕なんてない」 そう思われるかもしれませんが、実は共用部の演出に投資すべきケースがあります。
例えば、外壁の汚れが目立ち始めたRCマンションにおいて、予算の都合で数百万円規模の塗装工事が見送られるケースは少なくありません。そのまま何もしなければ、家賃を下げる圧力が高まります。
しかし、AM(資産管理)の視点を持つことで、別の解決策が見えてきます。 外壁工事を一旦延期し、代わりに「エントランス照明の変更」「館名板(看板)の研磨」「集合ポストの交換」といった局所的な演出に予算を集中させるのです。
これなら費用は外壁塗装の10分の1以下で済みます。 夜の内見時の印象を「薄暗い古いマンション」から「レトロで雰囲気のあるマンション」へと変えることができれば、家賃を維持したまま入居付けを行うことが十分に可能です。
資産価値の維持において重要なのは、電球切れやマットのズレといった「細部の変化」を見逃さないことです。 しかし、担当者が1人で抱える物件数が多すぎる場合、どうしても巡回時のチェックが形式的になり、こうした細部への目配りが難しくなる側面があります。
私たちフィナンシアジャパンが、担当者1人あたりの管理戸数を「200戸」という適正規模に制限している理由はここにあります。ゆとりある体制を作ることで、細やかな変化にも気づき、オーナー様へ低コストで効果的な改善提案ができるよう努めています。

共用部は、オーナー様の「物件への愛着」が最も表れる場所です。 どれだけ室内を綺麗にしても、エントランスが暗く汚れていれば、入居者は「このオーナー(管理会社)は、入居後の対応も雑だろうな」と不安になります。
逆に、エントランスが温かい光で満たされ、整然としていれば、「ここは大切に管理されている。安心して住めそうだ」という信頼感に変わります。
まずは一度、夜にご自身の物件を訪れてみてください。 そして、もし「暗いな」と感じたら、電球を1つ変えることから始めてみませんか?その3,000円の投資は、将来の家賃収入として必ず返ってきます。
「自分の物件の夜の雰囲気を、プロの目線で確認してほしい」 「今の管理会社から、共用部改善の提案がなくて不安だ」
もしそうお感じなら、それは担当者の能力不足ではなく、「構造的な問題」かもしれません。一般的な管理会社では、担当者1人が多くの物件を抱え、きめ細やかな提案まで手が回らないケースがあるからです。
株式会社フィナンシアジャパンでは、札幌市・北広島市・江別市・小樽市・千歳市・恵庭市エリアの不動産オーナー様向けに、将来の収益最大化を見据えた「資産管理(AM)」までをワンストップで提供しています。
「今の管理体制で本当に資産価値を守れるのか?」 まずは無料経営相談で、貴方の物件のポテンシャルを確認してみませんか? 改善すべきポイントや運用方針について、プロの視点からアドバイスさせていただきます。
株式会社フィナンシアジャパン 代表:鎌田 恵美
宅地建物取引士/公認不動産コンサルティングマスター/管理業務主任者ほか
札幌市で不動産管理・賃貸経営支援を行う不動産コンサルタント。複数の国家資格を活かし、空室対策や相続物件の活用、賃貸経営の効率化など、オーナーの立場に立った実務支援を行っている。